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「生まれながらのコーディネーター」

富永 一夫(とみなが かずお)

日本テトラパック(株)に21年勤務。同社を退職し、多摩ニュータウンでの地域づくりNPO活動を開始。マンション管理組合の理事としての経験を基に、NPOによるマンション管理事業を手掛ける。さらに、コーポラティブ住宅建設の支援事業、長池公園の指定管理者として八王子市と協定。NPOの地域支援ビジネスモデルの構築に挑戦中。

富永 一夫

2014年11月21日 第3回 地域づくりNPOのビジネスモデル

第3回 地域づくりNPOのビジネスモデル

経営の4資源を理解して
地域づくりに関わる人(地域人)も、ビジネス手法を理解することは重要と考えている。地域づくりを持続的に組織展開するためには、特に必要ではないだろうか。ビジネスの世界では、経営を4資源「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」に分解して考えるマネジメント手法を、長い年月をかけて洗練させてきた。地域人も、この4資源を理解してマネジメントに携わると「想いや志の実現性」をより高めることができると考えている。あるいは、マネジメントに熟達したビジネス経験者が、地域づくりに参加することで、新しい世界が開けてくるのでないかとも期待している。
今回は、地域づくりの「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」について書いてみたい。キーワードは「多様性」だ。
「ヒト」の多様性
NPOフュージョン長池は、実に多様な立場の人たちと関わっている。行政人(中央官庁、東京都、八王子市)、企業人(造園業者、電気工事会社)、教育人(幼稚園・保育園、小中学校、大学)、福祉人(障害者団体)等々だ。これらの人たちと、共生しながら地域づくりを行っている。とりわけ、地域人(ボランティア、有給スタッフ)との共生は重要なテーマだ。2013年度には延べ3,275人のボランティアの方々が参加し、延べ18,625時間もの活動をしている。
ただ、意外に思われるかもしれないが、私たちは最近までボランティアの募集をしたことがなかった。ボランティアを「お願い」したことがないのである。「ボランティアをしたい」、「NPOで活動して自分の夢を実現したい」といって訪れる人を受け入れてきだけだ。
ボランティアは無償の行為だから、責任感を強く持ってもらうことが困難である。台風が来たり、酷暑・厳寒の日があったりするとお休みになるのも当然であろう。一方で、受入側は、十分に準備を整えて迎えないとボランティアの方々に失礼になる。一般の企業で、このような「ヒト」を用いて効率的なマネジメントをすることはできるだろうか?恐らく難しいだろう。
このような無償の好意の人たちに責任感を持って活動してもらうために、私たちは「~をして下さい」という「お願い(指示)」をする代わりに「何がしたいですか?」、「何が得意ですか?」、「こんなことができると助かるのですが・・」とつぶやいてみる。すると「それなら自分は、これをやりましょう」という人が出てくるので、「嬉しいですね」、「無理しないでやって下さいね!」ということになる。ボランティアを指示され、やらされるのではなく「自らの意思でやりたい」ということになると、人は自然に喜びと責任感が湧いてくる。その上で、最初に本人が「やれる」という回数や量を半分程度に減らす。「まあまあ、無理しないでいきましょうよ」ということだ。ボランティアマインドが旺盛の方々は、どうしてもやる気が過ぎるからである。これを私は「割る2の大原則」と言っている。地域づくりにおける「ヒト」のマネジメントのコツの一つだ。
もちろん、この図式を成り立たせるためには、私たちは、ボランティアよりも圧倒的に高い力量を維持しなくてはならない。また、ボランティアをしたくなるような魅力的な情報発信が欠かせない。
「モノ」と「カネ」の多様性
NPOフュージョン長池には、多様な「モノ」が集まってくる。それも、寄贈品や貸与品だ。スタジオジブリからアニメ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」の原画が届いた時は大変に感謝した。貸与物件として大切にお預かりし、長池公園自然館で展示している。また、カゴメ株式会社から毎月約100ケースのジュースを無償提供いただいている。図書など、個人からの寄贈品も数多い。
通常、気を付けなければいけないのは、寄贈者が誰かということだ。しかし、我々の場合は、相手の氏素性がわかっているので難しくない。一方で行政の場合は、ふさわしくない寄贈品を受け取ると後々問題になる。だから寄贈者の審査が必要だ。NPOに信用力がついてくると寄贈品という「モノ」の価値が多様に集まってくるのである。
NPOフュージョン長池の「カネ」、つまり資金源は、八王子市指定管理の基本協定金、修繕協定金、公共料金協定金といった、八王子市からいただくものが大きい。ただし、指定管理者は、予算に対して赤字を出すと自ら補填しなければならず、儲けてもいけない、この赤字補填リスクに対応するためには、NPOフュージョン長池が独自に産み出す資金が必要になる。それが、広報紙への広告掲載料だったり、福祉作業所の製品の展示・販売手数料だったりする。NPO法人の「カネ」のマネジメントの多様性だ。
「情報」の多様性と活動の継続性
「ヒト」の多様性のところで、「ボランティアの募集はしない」と書いた。それにも関わらずボランティア希望者が集まってくるのはなぜか?私たちが、魅力発信に力を入れているからだと思う。多額の広告費を使うことが単純に魅力発信ではない。広報誌「みんなの長池」の発行は大切にしているが、ポスターを1枚貼ること、施設を綺麗に掃除することも魅力発信の一つだと考えている。八王子市蓮生寺公園の「ふれあいの丘」に建つ管理棟(通称:ふくろうの家)に来て欲しい。天井まで吹き抜けの開放感のある白亜の建物だ。2014年の4月から指定管理者として懸命に美しい管理方法を工夫してきた。エントランス広場(通称:とちの木ひろば)には近隣の小学生の描いた絵が丁寧に掲示してある。公園内のあちこちには植物名ラベルが多数表示されている。こんなことも魅力発信になる。
何よりも、私たちが魅力ある夢を対話(情報発信)することが大切だ。美しい花にハチが集まるように「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が集まってくる。それによって、夢が形になっていく。それがまた魅力となって多様な社会資源が集まってくる。情報発信力が、情報受信力を育てるのだ。
2014年12月で、NPOフュージョン長池は設立15年を迎える。暮らしの支援事業を手掛け、「地域の人たちの幸せのみ」を考えて活動してきた15年だ。その過程で、NPOならではの多様な「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のマネジメントに自信がついてきた。それで、ようやくボランティア募集を解禁することにもした。募集に応じて3名の方が手を挙げてくれた。「生きがいを求めてボランティアに応募した」のだという。
私たちは、多年草だ。来年も次の花が咲くように、人が集まるように、土壌を整えておかなければいけない。この土壌を次の世代にどう引き継ぐかを、この頃真剣に考えている。